瞑想心理カウンセラーリッカのつぶやき

決められないとき、自分の気持ちがわからないとき。あなたの本心をカウンセリングと誘導瞑想で一緒に発見します。

★どうぶつ性格診断カウンセリング60分¥5,500★(毎月3名限定)

誕生日 

 

まず、ジカについて。

幼少期、名前が発音できず、自分のことをジカと呼んでいた。

過去をふり返り、心理学と絡めていく予定だけれど、それはもうちょっとだけまってほしい。

 

80年代 9月14日 15:15

2800グラム 女児

 

後に、祖母のトチコはジカによく話したものだ。

 

「産まれた瞬間に、あまりに野太くて大きな声で泣くものだから、皆てっきり生まれたのは男の子だと思った」

 

まるで預言かのように、ジカは負けん気の強い、目つきの鋭い女の子として育つ。

 

高校生になったジカは、母に尋ねた。

弟達は、地元の病院で生まれている。なぜ自分だけ、母の実家のある街で生まれたのか。

 

母は、いたって普通に話し始めた。

なかなか子供ができず、やっとジカを妊娠したこと。妊娠初期に、風疹の数値が高いと医師から指摘を受けたこと。地元の病院では堕胎を強く勧められたこと。

 

諦めきれなかった母は、300キロ先の実家のある大きな街の病院を頼った。そしてジカを出産した。

 

率直に言って、「生きてて良かった」と思うよりも先に、ジカは、生命とは残るも残らないも紙一重なのだなと驚いた。

 

 

39歳 夏

ジカは、婦人科病棟のベットの上で胡座をかいていた。膝に頬杖をつき、瞼を閉じ、その上の眉間には皺が寄っている。

 

絶対安静が解け、二日が経過した。

腹腔鏡手術のあと目覚めると、大きな絆創膏が4カ所貼られている。特にヘソ上部の傷は、病衣のゴム紐が食い込んで痛い。

後日、このヘソ上部の傷を「デベソ」と名付けて慈しむことになるが、この時のジカは知る由もない。

 

本来なら、婦人科と産婦人科の入院病棟は分けられている。ところが、この数日間は出産の予定がたて続き、婦人科病棟に10組以上の赤ん坊とその母親が入院していた。

 

一人が泣きだすと、二、三人が合わせて泣く。そうこうしているうちに、共鳴する機能でも備わっているのか、ほぼ全員が泣きだす。

安静時にはまったく気にならなかった泣き声が、体力の回復とともに逃げ場のない騒音のように感じてしまう。

 

また、表情は疲労困憊ながら、ピカピカと輝く母親たちの姿も直視できなかった。

 

真夏の蝉しぐれのように、頭上から降る大合唱を聞き続ける。

ジカは、この現象を「赤子しぐれ」と名付け、退院後は友人たちに、一生分の泣き声を聞いたと冗談にして話そうと思った。

 

そうでも思わないと、今後の人生で自分には到底手が届きそうもない、生命力のかたまりがそばで大声をあげている。この現実に押しつぶされそうだった。

 

今回の手術で、完全に機能が失われたわけではない。それでも、よくわからない内に過ぎてしまった自分の時間を、思いを、どのように受け止めれば良いのかジカには分からなかった。

 

 

 

(まさかの、出生からの振り返り。ちなみに、自身の入院期間は日中に昼寝すれば良いだけなので、寝不足になることはなかった。退院日が近づく頃には、うっかり母性に目覚めだした。一度は体験して欲しい、赤子しぐれ)