12歳 運動会
母はいつも、徒競走前の順番を待つジカの佇まいが、走りに自信があるように見えて面白いと笑っていた。
確かに、音に早く反応できたので、スタートダッシュは早かった。
50メートル走も悪くなかった。
100メートルになると、なんだか加速もしないし、途中で飽きてくるし、なぜ走っているの分からなくなった。そのまま、順位なんてつかないぐらい後方に消えていった。
14歳 体育祭の練習
お玉に卓球のピンポンをいれ、落とさずハードルを飛び、網を潜って戻ってくる。
誰が考案したか分からない障害物競走であったが、ジカは同じ組の誰よりも早かった。
次の走者を見送り、肩で息をしながらジカが振り返ると、チームの皆はポカンとした表情をしていた。
体育祭当日、ジカはチームから期待を寄せられるという、人生初の体験をする。
球技や陸上競技では、体が連動する感覚どころか気配すらしなかった。
高校進学し、ジカは開眼する。
何故体育の授業に武道がないのだと。
(ジカは、なかなかハイハイをしなかった。ずり這いが始まり、母が期待を込めて見守っていると、ある日急につかまり立ちにチャレンジし始めたという)